KANEKOのジェフ雑談

ジェフを定点観測。戦術的だったり、スポーツ科学的だったり、叙情的だったり。

〜雨降って地固まる〜【ジェフ批評】2022第15節vsファジアーノ岡山

 

連休も終わり、連戦もいよいよ最終戦。直近二試合では完敗、サポーターと選手の関係も悪化し最悪とも言えるチーム状況。さらに相手は好調4位岡山と、これ以上ないほどに悪条件が揃った今節。

試合前にはオシム氏の追悼セレモニーが行われました。現所属の選手たちには直接関係はないのですが、やはりこのクラブのスタイルを築いたレジェンドにサポとしては想いを馳せずにはいられません。今のジェフには今のジェフの形がありますが、それならその形で、あの頃のように明確なスタイルと勝利への執念を見せてほしいものです。

 

先発と試合前の印象

先発は、左CBに佐々木が入り、右に鈴木、新井一はベンチスタートへ。右WBは米倉が今季初スタメン。左末吉、ボランチは田口が外れて小林、シャドーに高木が復帰。3CBについては手を加えるべきポジションだったと思います。ここまで安定したパフォーマンスを見せていた新井一が外れたのは少し意外でしたが。米倉は今季途中出場でコンスタントに出場していましたが、パッとしない印象。ワントップのチアゴは前節露呈した守備の強度不足が大きな不安要素。守備型のボランチである小林を起用したことも含めて、基本は自陣に引き込んでロングカウンター狙い(東京ヴェルディ戦の高木のゴールが良いモデル)かな、という印象を受けました。

岡山は実力ある選手を的確に補強しましたね。昨年J2で脅威だった柳とヨルディ・バイスのCBコンビ。中盤から前に外国籍選手3人を配しながら組織力の高いチームを作り上げている点は木山監督の手腕でしょう。早稲田大卒一年目の田中雄大は、小柄ながら馬力があり、同大の先輩相馬勇紀を彷彿とさせます。佐野航大は米子北出身のルーキーで、町田で大活躍の海舟の弟ですね。

ハイライン

ですが、試合が始まるとジェフは予想に反してハイラインを敷いていました。ハイラインに対してはハイプレスがセットにならなければなりませんが、チアゴも最低限のプレッシングは遂行できていました。

どうしてもプレスがかかりきらないタイミングもありましたが、そこはボランチとWBの走力で対応。両WB、ボランチ共にこのセットでなければ成り立たない方法だったのではないでしょうか。

ボールの保持は、左CBに佐々木が入ったことで非常にスムーズになりました。高精度のフィードを持っているので、一発で展開できる選手でもあります。前半途中からは完全にジェフのペースでしたが、互いに決定機はほぼ作れず。

後半に入るとより一層ジェフが勢いを持ってゴールに迫りましたが、なかなかネットを揺らせません。後半のジェフは、両WBをCBが押し上げ、シャドーとの連携でサイドを落としていくいつもの形で攻め込みましたが、なかなかフィニッシュが合わず。セカンドボールをボランチが回収し、波状攻撃を生み出しますがゴールは割れず。このまま引き分けかとも思った後半アディショナルタイム、途中出場の髙橋が決めて劇的勝利を掴みました。

 

“持ってる”選手

まさにフクアリ劇場と言える素晴らしい舞台の主役となった髙橋でしたが、“持ってる”選手と形容されることの多い選手です。もちろん、努力の賜物が全てのプレーなので、「持ってる」の一言で片付けてしまうのはあまりに失礼な話なのですが、やはり何か持ってると言わざるを得ない。その何かを、少し理屈にしてみようと思います。

髙橋は、青森山田出身の選手ですが、高校時代から得点力には素晴らしいものがありました。3年次の高校サッカー選手権では全試合で得点を挙げ、5得点でMFながら得点ランキング2位に輝きました。当時から非凡な得点力を発揮していた一方で、明確な武器がない選手とも取られがちです。なぜか点は取るけれど、守備力が高いわけでもフィジカルが強いわけでも足が速いわけでもない。おそらく明確な強みがないために、プロの世界ではなかなか出場機会が得られずに苦しんだのでしょう。そんな髙橋が身につけた一つの武器がユーティリティ性であり、昨季はCBでの出場もありました。ですが、彼の真の魅力は昨日のゴールシーンにこそ詰まっていると思います。

「なぜか点を取る選手」は、それだけで価値がありますが、そこにはいくつかのタイプがあると思います。髙橋の得点力の大きな根源となっているのは、まずはシュート技術の高さ。左右両足から、高精度でパンチのあるシュートを放てる技術は、彼の大きな魅力です。そしてもう一つは、動き続けて危険な位置に侵入できるという能力。特に、スクランブルの状況で浮いた位置にいるのが上手い印象です。この二つが髙橋の大きな特長ですが、彼がポジションをなかなか掴めていない理由もはっきりしていると思います。それは、最適性ポジションの不明確さでしょう。能力を見ると、インサイドハーフの選手なのですが、ジェフにそのポジションは存在しません。役割が近いのはボランチのように感じますが、ジェフはサイド攻撃を手厚くするためにCBを攻撃参加させ、ボランチはそれほど攻撃参加しません。では、シャドーはどうかというと、このポジションでは裏抜け役が一人、運び役が一人求められています。左右のCBは攻撃参加の機会も多く、昨季はこのポジションでも出場しましたが、やはり守備の選手ではありません。

今のフォーメーションのまま彼の強みを最大限発揮するには、「ボランチとして起用した上で独自の役割を与える」が最適解ではないでしょうか。今回の得点シーンは、試合後のコメントからも、与えられた役割というよりはその場での判断の結果だったのでしょう。あのプレー(プラス、サイドのボール循環のサポート)を役割として、同サイドのCBの攻撃負担を軽減していくことが現状の起用法になると思います。

 

 

 

雨降って地固まる

この記事の冒頭、横浜FC戦後、大分戦後に書きましたが、選手とサポーターの間に悪い空気が漂う中で迎えた試合でした。

【ジェフ批評】2022第11〜13節vs東京ヴェルディ・レノファ山口・大分トリニータ - KANEKOのジェフ雑談

【ジェフ批評】2022第9・10節vs横浜FC・大宮アルディージャ - KANEKOのジェフ雑談

 

今節は、サポーターと選手が一丸となれたのではないでしょうか。新井章太がゴール裏を煽り、サポーターが拍手と手拍子で応える。最後の得点も、サポーターが呼び込んだゴールだったように感じました。この素晴らしいスタジアムの雰囲気こそがサッカー観戦の魅力であり、サッカーの美しさであると思います。過ぎたことをとやかく言いはしませんが、こうした雰囲気を続けていけるようにサポーターとして支えていきましょう。